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ブリヂストン、新たな月面探査車用タイヤを開発 走破性と耐久性を両立

ブリヂストンは3月28日、月面探査車用タイヤの性能向上を目指して新たなタイヤを開発したと発表した。そのコンセプトモデルを、4月8日から11日まで米コロラドスプリングス市で開催される米国最大の宇宙関連シンポジウム「第39回 Space Symposium」のJAXAが運営する日本パビリオンJapan’s Space Industryの同社ブースで初めて展示する。

月面探査車用タイヤの新コンセプトモデル月面探査車用タイヤの新コンセプトモデル

ブリヂストンは2019年より月面探査車用タイヤの研究開発に取り組んでいる。「第1世代」は金属製の柔らかいフェルトを接地面に配置することで月面を覆うレゴリスと呼ばれるきめ細かい砂との間の摩擦力を高め、より優れた走破性を実現する独自の技術を採用した。

この技術を進化させつつ、今回開発した「第2世代」となるタイヤは、これまでの研究開発を通じて分かってきた月面を走るモビリティに求められるより厳しい走破性と耐久性に対応するため新たな骨格構造を適用した。

新構造では空気充填が要らない次世代タイヤ「エアフリー」で培ってきた技術を活かして新たに薄い金属製スポークを採用し、トレッド部を回転方向に分割している。これにより、岩や砂に覆われ真空状態で激しい温度変化や放射線にさらされる極限の月面環境下においても走破性と耐久性の高次元での両立を目指す。

また、金属製スポークの形状や厚みを構造シミュレーションで最適化し、しなやかに変形しながらも金属製スポークの局所的なひずみを最小化して耐久性を高めつつ、分割したトレッド部により接地面積を大きくしてタイヤを沈み込みにくくすることで、走破性もさらに向上させている。

月面探査車用タイヤプロジェクトは、ブリヂストンが中期事業計画(2024~2026年)で探索事業として位置付けている「エアフリー」の活用を宇宙・月面へ拡大する取り組み。将来的には月面という極限の環境で磨いた技術を、地球で使うタイヤにも還元し、さらなる価値創造へつなげていく。

さらに、今回のプロジェクトを通じ、同社の新たな「自ら極限へ挑戦する姿」をパートナーへ示すことで、宇宙ビジネスのネットワーク拡大、国内外の様々なパートナーとの共創へ発展させていく。