住友ゴムは、東北大学の齋藤真器名准教授、理化学研究所の初井宇記グループディレクター、高輝度光科学研究センターの依田芳卓主幹研究員らと共同で、1ナノ秒を含む幅広い時間領域で原子・分子・ナノ構造の運動を測定できる新しい放射光技術を開発したと発表した。この研究を通して、高強度かつ耐摩耗性に優れたタイヤ開発を進めていく。
原子・分子・ナノ構造の運動を幅広い時間領域で測定可能な放射光技術の概念図同社はこれまで、東北大学の齋藤とタイヤの耐摩耗性能向上を目指した共同研究を実施してきた。従来の測定技術では10ナノ秒から1000ナノ秒の時間領域のみにおいて、ゴム中の原子・分子運動の測定が可能だった。一方、耐摩耗性能向上に向けて、ゴム中の原子・分子運動をより短い時間領域でさらに詳細に調べる必要があったという。
今回開発した新しい放射光技術は、0.1ナノ秒から100ナノ秒の運動を測定することが可能となり、従来の測定技術とあわせることで、幅広い時間領域において原子・分子運動を測定することができるようになる。
この技術は、大型放射光研究施設｢SPring-8｣を活用して初めて開発されたもの。さらに、最新の2次元X線カメラ｢CITIUS｣を用いることで、動いているものの時間スケールだけでなく、空間的な大きさの同時測定も可能とした。開発した技術をゴム材料に適用することで、0.1ナノ秒から100ナノ秒という幅広い時間領域で、ゴム中の分子鎖の運動の測定に成功している。
なお、今回の研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構が主導する、独創的で国際的に高い水準の研究を推進する戦略的創造研究推進事業｢CREST｣にて取り組んでおり、この技術をタイヤ性能向上に応用させることでサステナブルな社会の実現に貢献していく。
